山尾悠子の新作。


著者をご存知の方にはこれ以上の説明はいらないでしょう。

二〇才でデビューを果たし、独特の作風で高い評価を受けたものの、
十数年という長い期間作家活動が停止していたために伝説と呼ばれていた幻想文学の作家です。

 

幻想文学と一口に言ってもさまざまありますが、
著者の場合、非日常的な世界を客観的な視点と硬質な文体でまるで現実の出来事のように克明に描く作風といえるでしょう。

 

著者の描く幻想の世界は、著者が最も影響を受けたというシュールレアリスムの画家、ポールデルヴォーの作品のように時間が静止したような静寂と、これから何かが起こるという不穏な空気に満ち満ちていて、その不思議な魅力につい惹きこまれてしまいます。

 

そして、絵画的技法に基づく独特の視点や大胆な構図を用いた細密な描写は、幻想的でありながらも、まるで自分が実際にそのシーンを目撃したかのような強烈な視覚イメージを喚起させます。

 

発売早々にして各書店で品薄となり、増刷が決まった話題作です。
読書好きの人ならぜひ、チェックしておきたい作品です。

 

飛ぶ孔雀
山尾悠子
文藝春秋
2,200円 (税込)