精緻な絵と、他にはない不思議な作風の絵本作家、
junaida氏の新刊です。
「の」とは、日本語の助詞の「の」です。
おはなしは表紙の裏側から始まります。
遊び紙も何もない、無駄のないつくり。
中のページは表紙と同じサイズに裁断されて、普通はある天地のへこみは存在しません。
この本には、表表紙から裏表紙までぎっしりと物語が詰まっているのです。
最初のページで「わたしの」からはじまり、
次に「お気に入りのコートの」、
そして「ポケットの中のお城の」と続いたところで、
あなたはもう、不思議で終わりのない世界に迷い込んでいます。
「の」で次々につながっていく幻想的な世界を形作るのは、
素敵としか言いようのない、緻密でいながら体温を感じさせる絵です。
一枚一枚が、部屋に飾っていつまでも眺めていたくなる。
円のように循環するかと思いきや、
少し軌道をずらして物語を終える様子は、
「の」の形そのものに思えます。