「瀧 廉太郎」
彼は、『荒城の月』に代表される、明治日本の西洋音楽黎明期に現れた夭折の天才音楽家である。誰もがよく耳にする児童唱歌にも、その名を残している。
誰もが知るその肖像から、「繊細」な存在としての彼の横顔を想像してしまうが、音楽に対する情熱を燃やして駆け抜けた25年の短い生涯は、西洋音楽に対して門戸を開き始めた日本の音楽に「革新」を生み出そうとする、溢れんばかりの向上心に満ちていた。
幼少時代から、「音」に触れてきた廉太郎は、その節目に、日本音楽の黎明期における著名な人物たちとの邂逅を果たす。
中でも、文人・幸田露伴の妹たち「幸田延」「幸田幸」の姉妹は、廉太郎にとって師となり、目標となり、ライバルとなって、彼の音楽を昇華していくのである。
「音楽」によって巡り合った人たちとともに、廉太郎の駆け抜けた青春の日々が、鮮やかに描き出されていく・・。
それはあたかも、廉太郎自身が奏でてきた「ハーモニー」を、ひとりの聴衆として、ともになぞらえている気分にさえなってくる。
それが、『廉太郎ノオト』なのである。