今回は、渋沢栄一の『論語と算盤』をご紹介します。

渋沢栄一といえば、現在も活躍する数々の名だたる大企業の設立に関わった
財界の偉人。
2021年のNHK大河ドラマ「青天を衝け」の主人公にして、
2024年の新一万円札の肖像に選ばれている時の人です。

タイトルの『論語と算盤』が意味するのは、
 論語=仁義道徳(儒学)
 算盤=経済・経営
即ち、道徳を持って経営する・道徳との均衡がとれた商売をするという、
渋沢翁の経営哲学の書ということになります。

江戸末期、農家に生まれた渋沢栄一は、
武士としてとりたてられ、攘夷志士として活動します。
しかし、紆余曲折を経て幕臣に名を連ねることとなり、
見聞を広めるために渡仏。
その最中に幕府は倒れてしまいます。
その後官僚となるも、その世界に違和感を覚え、
最終的には財界に身を投じて大活躍することになります。

つまり、渋沢翁は侍として学んだ儒教と、商売人としての魂、
二つのマインドを同時に持っていたのです。
それは"士魂商才"という翁の言葉によく表れています。

そうした生き方から、翁は絶大な人気者でした。
それは単に成功した経済人であったからではありません。
その成功が、仁義道徳に裏打ちされたものだったからです。
収入の多さが必ずしも幸福度と直結しない現代日本において、
すべての人が読むべき人生の指南書といえます。
現代語訳 論語と算盤
渋沢栄一
筑摩書房
902円(税込)