この春、突如新書コーナーに現れ出た「ルワンダ中央銀行総裁日記」
初版は1972年と50年近くも前に出版された本でこれまでは中公新書のコーナーに1冊ささっている、かつてのベストセラーで知る人ぞ知るという地味な存在でした。
それが一風変わった帯をまかれ、多くの書店で積み上げられ、今やニュースなどにも取り上げられるほどの注目ぶり。
それはこの本がまるでライトノベルの異世界転生モノに似ているというツイッターから始まりました。
異世界転生モノとは、現代の主人公がある日突然別世界に転生して現代の知識を活かして活躍するという、
主にライトノベルやネット小説で大人気のジャンルなのですが
そんな小説の世界を地でいくような話と話題になったのがきっかけで読者層が大きく広がっているんです。
著者の服部正也さんは1965年日銀からアフリカの小国ルワンダの中央銀行総裁として赴任します。
赴任中の6年間を綴ったのがこの「ルワンダ中央銀行総裁日記」なのですが、めちゃくちゃドラマチックで
読んでいて胸が熱くなる場面が満載です。
50年も前に書かれている金融ものって小難しいのではと読む前は不安でしたが、思った以上に読みやすいので
専門知識がなくても大丈夫でした。
危機に瀕したルワンダの経済を立て直すため、権力者に阿ることなく、現地の人を叱咤激励する服部さんの姿勢には
今の私たちが学ぶべきところがたくさんあります。
ルワンダというと1994年に起きた大虐殺を思い起こす人も多いかもしれません。私も「ホテル・ルダンダ」という映画を見て
こんな悲劇が起きるんだとショックを受けた記憶があります。けれども、遠い国で起きた内戦というイメージで日本との結びつきについてはまったく知りませんでした。
今、ルワンダはIT国家としてアフリカの中でも急成長を遂げているそうです。
半世紀前に服部さんが残したものが今のルワンダにつながっているのかもと思うと、服部さんのまさに無私の働きに頭が下がります。