「ない本」とは、あなたが持ってる何でもない画像をリプライで送ると、その画像を表紙にした架空の文庫本を作ってくれるというTwitterアカウントのことです。

いかにもありそうな表紙写真に、それっぽいタイトルがつき、裏表紙にはありもしない物語のあらすじが書いてある、その上バーコード、背表紙の整理番号まで入って、本物にしか見えないのに実在しない本を作り出すそのアカウントは話題を呼び、フォロワー数6万人を超える人気となっています。

そんな読んでみたくても読め「ない本」たちが、ついに一冊の本当に「ある本」になりました。
好評を博した、ない本28冊がショートショートになり、実際に読むことができるのです。
それだけでなく、設定された出版社ごとにフォントや文の組み方を変えている、架空の著者のプロフィールまで載せてあるなど、実在しない本に対してリアルさを追求する姿勢はいかんなく発揮されています。

ここまで細部にこだわれるのは、長年本に触れ親しんできたからに違いありません。
SNS上での遊びから生まれた、何から何まで作り物の本ですが、そこからは作者である能登氏の本に対する愛情を確かに感じることができます。
ない本、あります。
能登 崇
大和書房
1,650円