コロナの影響を残しつつも、夏の甲子園に球音が戻ってきた。

 そして、甲子園を目指す球児たちが、さらに憧れているのが、「プロ野球」の世界であろう。


 毎年、100名前後の野球選手たちが、各球団からのドラフト指名を受けて、プロの野球選手となる。

 即戦力として期待される選手もいれば、将来性を買われた選手もいる。

 その中で、才能を十分に開花させることができず、プロの世界から去っていく選手たちも数多くいる。

 重圧に押しつぶされ、真価を発揮できなかった選手。

 怪我でその潜在能力を、十分に発揮できなかった選手。

 そして・・病に侵されてしまった選手。

 

 『奇跡のバックホーム』の著者・横田慎太郎は、甲子園をホームグラウンドにする阪神タイガースに、高卒ながらドラフト2位という高評価を受けて入団した元・プロ野球選手である。そして、父親もまたプロ野球で活躍していた選手であった。

 入団3年目から1軍のスタメンに抜擢され、着実な成長を遂げ、順風満帆なプロ野球人生を送るはずであった横田選手だったが、突如として病魔が襲いかかる。

 またたく間に暗転してしまった人生。しかし、横田選手は、家族やチームメイトを含めた周囲の人々の支えを受けて、復活を期して病魔に立ち向かう。命さえ危ぶまれる病気に対して、真っ向勝負を挑むのである。


 過去、難病を克服してグラウンドに帰ってきた選手は数多くいる。そして、横田選手も病魔に打ち勝って、阪神タイガースのユニフォームに再び袖を通し、グラウンドに戻ってきた。

 それでも、かつてのような動きのできない自分との葛藤が、横田選手を待ち構えていたのである。

 1秒・1ミリの僅かなズレが、大きな実力の差となって表れるのがプロ野球の世界である。横田選手もそのズレに苦しみ、奮闘むなしく、ユニフォームを脱ぐ決意をすることになる。


 病に選手としての大成を阻まれながら、それでも、周囲の支えを糧にして、復活を目指して努力を続けてきた横田慎太郎選手。


 そして、引退を決めた年の最終試合に、横田選手のこれまでの歩みが集約したかのような、あらゆる人たちを感動させた「奇跡のビッグプレー」が起こるのである。


 


 


 

 


『奇跡のバックホーム』
横田 慎太郎
幻冬舎
1,540円(税込)