「東京藝術大学大学院美術研究科文化財保存学専攻保存修復彫刻研究室」
何かの呪文のように長く、全くどんなところか想像もできない名前ですがそこは仏像の構造や修理法を学ぶところで、なんと東京藝大に実際にある研究室らしいのです。
東京藝大というと「最後の秘境 東京藝大―天才たちのカオスな日常」(二宮敦人/著)を読んだという人は個性の塊のような集団をイメージする人も多いと思います。
けれどもこの研究室はちょっと違います。
何かを0から創作するのではなく、先人たちの遺した仏像を「模倣」することで、仏像の構造を学びます。それは何のためかというと「修復」が最終的な目的なのです。
個性的な人が多いイメージの大学ですが、中に入ってしまうと逆にこの「仏さま研究室」のメンバーの方がちょっと変わってるんじゃないかなと思えてきます。
この小説はそんな研究室で学ぶ4人の学生の1年を通じて私たち読者も仏像がどうやって作られるのかを知ることができます。どの仏像を模倣製作するのか、作り方も選んだ仏像に合わせて様々です。
その間に実際に研究室に持ち込まれた修復依頼のお手伝いをしたり、進路に悩んだり、はたまた恋をしたりします。
彼らの学びや成長に私たちも一緒になってハラハラドキドキできるのが青春小説の醍醐味でもあります。
私たちがいま見られる仏像は、ただ昔からそこにあったわけではなくて、様々な修復を経てここにあるんだと教えてもらいました。
いまの技術で修復がかなわなくても次の時代には新しい技術が開発されているかもしれない。だから失くさないように、残していくことが大事。それは仏像に限ったことではありません。
日本最高峰の藝大にこのような研究室があることを多くの人に知ってもらいたいです。
ぜひ「東京藝大 仏さま研究室」を読んでみてください。