6月と言えば初夏。
梅雨のうっとおしさはあれど、紫陽花の美しい時節です。
そして、6月の最も大きな特徴のひとつは、国民の休日がない唯一の月だということです。
というわけで、今回ご紹介するのは、てんとう虫コミックス『ドラえもん 14巻』です。
というか、そこに収録されているうちの一話、
『ぐうたらの日』
です。
6月に国民の休日がないことを憂えたのび太くん。
例によってぐうたらしながら鬱屈としておりました。
そこでドラえもんが取り出したひみつ道具が「日本標準カレンダー」。
このカレンダーをいじれば現実の暦もそれに合わせて変わるという、よく考えれば大変危険なシロモノです。
のび太くんはこのカレンダーによって「ぐうたら感謝の日」という祝日を制定し、誰も働いてはならないものとしました。
のび太くんのママも働くことを禁じられておりますので、当然ご飯なども作ってくれず、「いっしょうけんめい遊ぶことはぐうたらの精神に反する」ということで、ジャイアンたちも遊んでくれません。
困り果てたのび太くんは、休日制定を撤回するのでした。
W.W.ジェイコブズの有名な短編小説『猿の手』を彷彿とさせますね。
労せずして成就した望みは、時に高い代償を伴うものです。
「日本標準カレンダー」の効果は、日本中に及んでいました。その中には医療従事者、社会インフラや国防に関わる人たちもいたことでしょう。のび太くんたちのドタバタの裏側で、多くの悲劇が生まれていたのかもしれません。
常に誰かが働いてくれているからこそ我々の社会は成り立っており、大げさにいえば、その誰かのおかげで多くの命がその灯を消さずにいられるのです。
このお話はそれを教えてくれているのです―――と言ったら穿ち過ぎでしょうか。