三谷幸喜氏の脚本による大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の放映により、注目を浴びるようになった鎌倉幕府2代執権の「北条義時」。
日本史において、重大なターニングポイントを担った人物でありながら、その事績についての詳細が日の目を浴びることは、あまりなかったと言ってよい。
「鎌倉幕府」という日本史上初めての武家による政権の誕生が、征夷大将軍に任じられた「鎌倉殿」すなわち「源 頼朝」の功績であることはよく知られているが、その政権の守成と安定が、「北条義時」を中心とする御家人、すなわち坂東の豪族たちによってもたらされたことは、よほどの歴史通でなければ知り得ないであろう。
その過程を、『応仁の乱』で脚光を浴びた著者が、既存の学説に新しい解釈を交えつつ、解き明かしていくのが本書である。
本書はまず、「頼朝」を中心に据えて、「鎌倉幕府」ひいては「武家政権」の創業の事績を解説してゆく。「頼朝」が、一介の流人から源氏の棟梁として上り詰めていく過程の中で、北条氏を含めた坂東の豪族たちの動きが解き明かされてゆく。
そして、創業者である「頼朝」の死後、その意思を引き継ぐようにして、「義時」を中心とする坂東の豪族たちが、それぞれの思惑と権謀をせめぎあわせながら「鎌倉幕府」を守り立ててゆき、権力闘争における朝廷との最終決戦「承久の乱」を経て、武家政権は真の確立を見るのである。
ともすれば理解しがたい、混沌とした「鎌倉時代」の初期を、パズルが組みあがってゆくような感覚で味わえるの、本書の大きな魅力である。