柊一と従兄、友人たちは、山奥の地下建築を興味本位で訪れる。道に迷い偶然居合わせた3人家族を合わせ10人となった柊一たちは、地下建築の中で朝を待つことに。
だが、夜明けごろに発生した地震により出入り口がふさがれ、地盤への影響により建物の最下層から水が流れ込み始める。
このままでは建物全体が水没し、全滅してしまうという状況の中、殺人事件は起こる――。
外界から完全に隔絶された環境で、助けは望めない。全滅までの期限は一週間。誰か一人が犠牲にならなければ、全員助からないという状況。犯人以外の全員が、犠牲者は殺人犯であるべきだと考えている。
否が応でも疑心暗鬼が生じる中での駆け引き。そして犠牲者を選ぶための犯人探し。登場人物たちが空間的にも互いの関係性のうえでも閉塞感につつまれる一方で、読み手もその場にいるような息苦しさをおぼえずにはいられない。
本書はクローズド・サークル、トロッコ問題を主題とするデスゲーム、フーダニット、ハウダニット、ホワイダニット、サスペンスと、実に多くの顔を持っている。だが、とりわけ「"どんでん返しモノ"の傑作」としての側面が最も輝いているといえるだろう。読者は、すべてが一段落した後の最後の最後、いまだ触れたことのない驚愕と言い知れぬ不気味さを感じるはずだ。
Twitter上では一時期、タイムラインを埋め尽くすほどの話題になった本書。月並みだがネタバレ厳禁!であり、本当ならそのことすら口の端にのぼせるのもためらわれる。それほどまでに、先入観を一切持たずに読み始めていただきたいところだ。加えて、読了済みの人が口をそろえて「帯も見るな!」と言っていたことも明記しておきたい。