クイズ番組「Q-1グランプリ」の決勝戦。出場者の三島は、対戦相手の本庄絆が最終問題において問題文が1文字も読みあげられないうちに正解を答え、優勝を決めるという非現実的な事態を目の当たりにする。
ヤラセを疑う三島だが、番組責任者には取り合ってもらえない上、当人の本庄は放送後行方をくらましてしまい、みずから真相を追求することを決意する。本庄を知る人から話を聞き、過去に出演したクイズ番組を調べるうち、常人離れした記憶力を持つもののクイズに関しては素人であったはずの本庄が、いつの間にかクイズプレイヤーとして相応の技術を身につけていたことを知る。
はたしてあの回答は不正か、実力か―。三島はこの疑問に答えを出すため、あの決勝の全16問を振り返る。
あまり類を見ないクイズを題材にした小説。主人公・三島の回想という形で、クイズプレイヤーが勝負の際どのように思考を巡らしているのかが綿密に描かれています。
クイズにおいて「知っている」ということは何より重要なことのように思われますが、実は相手より早く、多く、精確に回答するために、たくさんのテクニックや駆け引きが駆使されていることが窺い知れます。
それに加えて、なぜ・どうやって出題される前のクイズに答えたかという謎の解明、不思議と心に響くクイズにまつわる三島自身の過去のエピソードなど、短いながらも様々な要素を持った小説です。
年末年始に何か気軽読める物語をお探しでしたらぜひどうぞ。