猫の日にちなんで、猫の知識をひとつ。猫はどんな高さから落ちても必ず足から着地します。充分に高いところからはもちろん、わずか数十センチの低さを背中から落ちても上手に体をひねって完璧な着地をこなすそうです。

猫の運動神経ってすごいなぁ、で片付くことですが、実はここには物理学の視点で見ると大きな矛盾を含んでいます。何の支えもない空中では、体を回転させようとしても反動によって逆向きに回転する力も働いてしまうためうまく回ることができないはずなのです。これは「ネコひねり問題」と呼ばれ、100年以上にわたり多くの学者の頭を悩ませた難問なのです。

本書はこのネコひねり問題の解決までを主軸にした科学読み物です。いたってシンプルに見える猫の動きを説明するために、その時代の科学者たちがどのように考えたかを紹介する形で科学史を振り返ることができます。物理学に始まり、数学、生理学、ロボット工学に宇宙開発の分野にまで話は及び、この問題に人類がどれだけ努力を費やしたのかに驚くばかりです。科学的な理屈の説明は少し難しい部分もありますが、有名科学者と猫に関するエピソードの紹介などもあり理系の人でなくても楽しく読めます。個人的には、めんどくさがりの飼い主のせいで論文の共著者になってしまった猫の話がお気に入りです。
猫か科学のどちらかに興味があるならぜひ手に取ってみてください。

猫がどうして人を魅了するのか、些細な疑問がなぜ人を夢中になせるのか。

それはきっと同じ理由なのかもしれない、そう思わせてくれるそんな本です。

「ネコひねり問題」を超一流の科学者たちが全力で考えてみた 「ネコの空中立ち直り反射」という驚くべき謎に迫る
グレゴリー・J・グバー/著 水谷淳/訳
ダイヤモンド社
1,980円(税込)