今、金沢ビーンズで絶賛おすすめの作家岩井圭也さんの最新作は北米最高峰デナリに挑む女性の物語!
デナリはかつてマッキンリーと呼ばれ、2015年に現地の言葉で「高きもの」「偉大なもの」という意味の『デナリ』が正式名称となった6190.4Mの山で難易度はエベレストやマッターホルンに匹敵すると言われています。
日本人だと上村直巳が1984年冬季単独登頂に成功しましたが、下山中に消息不明となり今でも遺体は見つかっていません。
最近では2015年にタレントのイモトさんが番組内で登頂に挑んでいるので記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。
山岳写真家の緑里は冬のデナリで消息を絶った友人リタの登頂を証明するためリタの妹分のシーラとデナリ登頂を試みます。温暖化で沈みゆく故郷を救いたいというリタの志を汚す醜聞を払しょくしたい二人ですが世界最難関の雪山の危険は容赦なく襲いかかってきます。
頂上までいくつかのキャンプ地を設定し、キャンプ地とキャンプ地を荷物を分けて運ぶため一往復半を繰り返しながら登るということを私は恥ずかしながらこの小説で初めて知りました。想像するだけでも気が遠くなるほど壮絶です。小説自体も過去と現在を行き来しながら進んでいくので、読み進めるごとに小説の世界に引き込まれていきます。
「女だから」「女のくせに」「女なのに」・・・緑里たちは社会でたくさんの壁にぶつかっています。緑里、シータそしてリタも決して超人ではなく、誰しもがか抱える不安や悩みを感じています。彼女たちが選んできた道はどれも「女」だからという理由で選んだものではないはずなのに。山では「女」だからという言い訳は通用しません。危険や恐怖に自分自身も力で向き合っていかなければいけません。彼女たちが山を目指す理由のひとつもそこにあるのかもしれません。
とはいえ、多くの登山家が命を落とした最難関の雪山の過酷さは読む側にも十分に伝わってきます。
天候、体調、ルート変更・・・あきらめる理由はどれだけでも見つかると思います。絶体絶命のピンチを切り抜けたかと思うとまたピンチに!という場面が次々に訪れます。だけど一歩一歩登り続けるのはなぜなのか、答えはとてもシンプルだと思います。
恐怖心すら利用しなければ生き残れない過酷な状況に何度引き返してもいいよと呼びかけたことか、でも同じくらいに頂上の景色を一緒に見せてほしいとも思いました。
読み終わった後、自分までちょっと強くなったような気がする一冊です。
緑里の呼吸までシンクロしそうなリアルな登山描写に息が苦しくなるのでご注意を!