石川県の文豪「泉鏡花」今年生誕150年を迎えます。

近年は『文豪ストレイドックス』にも登場し若い読者も増えている作家のひとりです。

泉鏡花は小説家を志し16歳で上京するまで、金沢で青春時代を過ごしています。

この作品の舞台は明治21年の金沢。まさに上京する1年前の泉鏡花こと少年時代の泉鏡太郎を主人公にした物語になります。

古都・金沢ではたらく人力車夫の義信は泉鏡太郎という少年から"怪異の噂"と引き替えに英語を教わることになります。義信は鏡太郎とともに明治の金沢で起こる不可解な噂の真相を調べに、様々な場所へと出かけることに。お化けのでる武家屋敷、雨乞い後に必ず死ぬ巫女、金沢城跡に現れる幽霊など......はたして本物の怪異は存在するのか――?

いずれも『高野聖』『草迷宮』『天守物語』など鏡花の代表作に絡めた連作短編になっていてこれから泉鏡花を読んでみようという方にも足がかりになると思います。
明治という制度や文化、生活ががらりと変わった時代に取り残されるもの、滅びゆくものに眼差しを向ける鏡花の創作の原点がこの物語から読み取れるのではないでしょうか。

少年「泉鏡太郎」と作家「泉鏡花」の間を埋める物語は、私たち読者の文豪に対するハードルも下げてくれる、わくわくとちょっと切なさも残る最高の鏡花入門書でもあります。

少年泉鏡花の明治奇譚録
峰守ひろかず/著
ポプラ社
814円(税込)