私事ですが、最近すっかりすっかり本を読む時間が減りました。

スマホを触ったり、ゲームしたり、何だったらぼーっとしている時間だってあるのになぜだか本に手を伸ばすのは億劫。とはいっても決して読書が嫌いになったわけではないし、読んでみたいと思う本との出会いは毎日のようにあります。

そんな「読みたいのになぜだか読めない」という人は私だけではないでしょう。

この本の著者も、学生時代から書評家として活動していたほどの読書家ですが、社会人になってから全く本読んでいないことに気づいて愕然としたそうです。

本書は、なぜ現代人は本を読むことに時間を割けなくなっているのかをテーマに、労働の在り方について記したものです。

日本人が本を読むようになった近代から、人がどのように本と付き合ってきたかと人を取り巻く労働環境の変遷を振り返ります。

自己啓発書が登場し労働をあおった明治時代、教養が労働階級を隔てた大正時代に、司馬遼太郎を読むのがステータスだった高度成長期ときて、現在はなんと読書が労働者にとって「ノイズ」となってしまったと著者は指摘します。

必要な情報をネットで直接手に入れることになれた現代は読書のように副次的に知識を得ることは効率が悪く、日々の労働に心血を注いでいる我々にはその余裕がなくなっていると結論付けています。

そして好きなことをやる余裕を持つために半身で働くことを提言しています。

もちろんこれは読書に限った話ではありません。やりたいことはいくつもあるのについついスマホ片手にだらけることを優先してしまうというような人は、いちど本書を手に取ってみてはどうでしょうか。

なぜ働いていると本が読めなくなるのか
三宅香帆/著
集英社
1,100円