ある夏休みの早朝「川の増水の観察」の為に、その親子は神田川を訪れます。そこで娘が、コンクリートの護岸に空いた排水口から、だらんと垂れ下がる、人の様なマネキンの様な足を見つけてしまい、『あれ、人形なんかじゃないよ。たぶん本物の人間の足だよ』と、事件は始まります。

数ある伊岡瞬のミステリー作品の中でも一押しの名コンビの、真壁刑事と、宮下刑事が、訳ありの女子学生と共に、東京の地下のいたる所に網の目のように広がる水脈『暗渠』を調べ、その死体がいったいどこから流れてきたのかを知る為に歩き回ります。

この世は、一瞬の迷いで悪の道に引きずり込まれる。

何気ない生活をしていたのに、、ほんの小さな気持ちの綻び、避けては通ることのできない現実、偶然が偶然ではなくなる瞬間、点と点がつながった時、現実に起こりうるかもしれない、、巻き込まれる可能性は誰にでもある、、と読みながら、ドキドキと不安に襲われます。

人間の闇、社会の闇。連日のようにニュースで耳にする特殊詐欺や、高齢化問題、孤独、そんな社会背景も絡まり、読み応えのある警察ミステリーです。

水脈
伊岡 瞬/著
徳間書店
2,090円(税込)