新しい年を迎えようとしているいま、皆さんはどんな本を読んでいるのでしょうか。
金沢ビーンズ店頭では文庫の年間ベスト10のコーナーを設置致しました。年末年始の読書の参考になればうれしいです。
その中でお勧めしたいのは8位にはいった「駐車場のねこ」です。
この本は当店の文庫担当(つまり私)が特別にオススメしたい本として今年の春から店頭で紹介している作品です。
始まりは文庫本が発売された2022年。毎月多くの新刊が発売になる中で処女作が一気に5冊も売れることはよっぽどの話題作でない限りなかなかのレアケース。それが「駐車場のねこ」でした。しかも私の大好きな森絵都さんが帯を書いている。嶋津輝という著者は馴染みはないがとりあえず買っておこう。けれど読まないまま積読になっていました。
それが長編を読むほどの時間はない、という時にたまたま手に取って読みだしたら、なにこれー?!って思うほど面白いではないですか。
幸田文の影響で女中に憧れ家政婦をしている姉とラブホテル勤務の手指に障害のある妹の日常を描いた「姉いもうと」
夫婦で営むクリーニング店に非常識な洗濯物を持ち込む女性客との奇妙な絆を描く「カシさん」
「一等賞」は商店街の優しさと、そこに住む少女のおかしな癖が妙に一体感をなす傑作です。
全7編はどれも一見何気ない日常を描いているかと思いきや、なんとも説明しがたい独特のユーモアを含んだ作品ばかり。なにも起こらないことがこんなに魅力的だなんて新しい発見です。
本を読んでいると不幸な展開とか悪い結末ってわりと簡単に予想しがち。それがはずれたとき展開によってはガッカリすることも。けれどこの短編集には予測ルートからはみ出したときの思いがけないワクワク感が待っています。不穏な雲行きの隙間から見えるぼやっと明るい光。ちょっと北陸の空模様にも似ています。だから特に北陸に住む人に薦めたい!
「大どんでん返し」や「号泣」のような大きな売り文句はないけれど読む人にこの面白さを伝えたい。どうしたら届けられるか。たくさん考えた作品でもあります。
これからも多くの人に手に取ってもらえるように大切に売っていきたいと思っています。
長くなりましたが最後に金沢ビーンズの文庫年間ランキングを発表して終わりたいと思います。
1位「変な家」雨穴
2位「百年の孤独」マルシア=ガルケス
3位「アルジャーノンに花束を」ダニエル・キイス
4位「傲慢と善良」辻村深月
5位「透明な螺旋」東野圭吾
6位「白鳥とコウモリ 上下」東野圭吾
7位「ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人」東野圭吾
8位「駐車場のねこ」嶋津輝
9位「クスノキの番人」東野圭吾
10位「六人の嘘つきな大学生」
東野圭吾のパワーに圧倒されます。
2025年はどんな本に注目が集まるのでしょうか。
店頭でどんな本が並ぶのかお楽しみに!