クジラが死んだら、その死体は深い海の底まで沈んでいきます。

太陽の光も届かない深海。どこまでも真っ暗で何もないような空間がずっと続く静かな場所。こういった場所で暮らす生き物は、他の生き物にめったに出会うことが無いため、ときには何日も何か月もエサにありつけません。

ここに突然、巨大なクジラの死体がおちてきたら、それは当然とんでもないほどのご馳走となります。クジラの肉を食べる生きものが集まり、またその生き物たちを食べる生きものたちもやってきて、お祭りのような大宴会となります。そして骨が分解されて無くなるまでなんと100年間もの間、様々な生物の命を支えるのです。

深海という厳しい環境で暮らす生きものにとって、クジラにありつくのはまさに奇跡のような幸運でしょう。きっと今もどこかでひっそりと開かれている知られざる大宴会に思いを馳せるのもいいでしょう。

クジラがしんだら
江口絵理/文 かわさきしゅんいち/絵 藤原義弘/監修
童心社
1,980円