犬と小説

11/1は犬の日。愛らしくも誇り高い犬たちの物語をどうぞ。

少年と犬

馳星周/著  文藝春秋

858円

震災により、飼い主も居場所もなくしてしまった一匹の犬、多聞。西へと向かう旅の途中、多聞は様々な傷を抱えた人間たちと出会い、寄り添い、癒していく。そうした人々に多聞もまた愛され助けられながら、彼はなぜ西に向かうのか。閉塞した人生を生きる人間たちが垣間見た希望と、多聞の誇り高い姿が印象的な、暖かく、哀しく、美しい連作短編集。

小説 星守る犬

原田マハ/著 村上たかし/原作  双葉社

660円

主人公の犬・ハッピーは、ある家族に拾われ、幸せな時を過ごす。しかし、家族は離れ離れになり、すべてを失って一人残された父親は、ハッピーとともに最後の旅に出る―村上たかしの傑作コミックを、原田マハが小説化。おとうさんに対するハッピーの健気な愛情が、暖かくも切ない。読者は幸せとは何かに思いを致し、滂沱の涙とともに読み終えるに違いない。

セント・メリーのリボン

稲見一良/著  光文社

748円

猟犬探し専門の探偵・竜門卓と相棒の猟犬ジョーは、資産家の令嬢から盲導犬の捜索依頼を受ける。調査を進めるうちに、竜門はある盲目の少女に行きつくが―稲見一良が描く男たちは、本当に格好良い。竜門も例外ではなく、寡黙で優しく、迎合せず忖度しない。この短編集の表題作で、竜門(とジョー)が最後に見せる優しさは、いつまでも胸に残り続けるだろう。

ベルカ、吠えないのか?

古川日出男/著  文藝春秋

880円

太平洋戦争後、キスカ島に取り残された4匹の軍用犬とその血脈が、20世紀という戦争の時代を駆け抜ける。無数の犬たちが登場し、いずれも世界に、戦争に翻弄され、時に人間の愚かさを笑い、あるいは寄り添い、何度も裏切られながらも、犬としての矜持を貫き続ける様は圧巻。文章の隅々までみなぎるパワーと疾走感を感じてほしい。

ドッグテールズ

樋口明雄/著  徳間書店

836円

人と犬の絆を描く短編集。特に、『南アルプス山岳救助隊K-9』シリーズの前日譚である『向かい風』は、この短編集の最後を飾るにふさわしい。半年前の災害現場での事故により心に傷を負った災害救助犬ハンドラーの弥生。愛犬のエマとの休暇中に偶然遭遇した捜索要請を前に、葛藤を乗り越えることができるのか。犬への愛に満ちた5編。

パーフェクト・ブルー

宮部 みゆき/著  東京創元社

814円

元警察犬のマサが探偵事務所の人々とともに殺人事件に挑む、宮部みゆきの長編デビュー作。ある夜、高校野球界のスター・諸岡克彦が殺害される。克彦の弟・進也、探偵事務所の長女・加代子とともに調査を進めるうち、想像を超える大きな闇と対峙することとなる――犬のマサの視点で描かれているのが面白く、犬ならではの所作が微笑ましい。シリーズ他作品もどうぞ。

虹の橋からきた犬

新堂冬樹/著  集英社

990円

映像制作会社社長の南野は、業績のためなら周囲を全く顧みない男だった。やがて家族にも仕事仲間にも見放され、南野は大きな挫折と孤独を味わうこととなる。そんな中、成り行きで隣家の子犬を預かることに。ゴールデンレトリーバーの子犬・パステルとの出会いが、南野を変えていく。涙なくしては読めない、癒しと再生の物語。

スピンク日記

町田康/著  講談社

935円

スタンダード・プードルのスピンクが、家族や何気ない日常についてつらつらと語る、シリーズ第一作。ご主人であるポチの愚かしさやへなちょこぶりについても語られるが、この人物は他でもない、著者の町田康氏本人のこと。本当は暗かったり深刻だったりするであろうエピソードも、スピンクが持ち前のポジティブさで笑いに変えてくれる。幸せな気持ちになれる一冊。

犬と私の10の約束

川口晴/著  文藝春秋

671円

幼いあかりがゴールデンレトリーバーのソックスを飼うとき、亡き母はあかりに10の約束をさせた。犬と家族になるということがどういうことか、強く戒めるための戒律であり、同時に、犬と笑いあいながら幸せに過ごすための叡智でもあった。あかりが成長し自分の世界を広げていく中で、時折約束を忘れてしまう様子には、共感しつつもヤキモキしてしまう。映画化もされた感動作。

野性の呼び声

ジャック・ロンドン/作 深町真理子/訳  光文社

748円

カリフォルニアで飼われていた大型犬のバック。しかし、突然の理不尽が彼を襲う。攫われて売り払われ、極寒の地で橇犬としての生を強いられることに。過酷な自然や人間の横暴に耐え、コミュニティ独自の掟に翻弄されながらも、順応し克服していく中で、次第にバックの内にある野性が目覚めていく。バックの逞しさや優しさ、何より厳しくも美しい大自然を感じられる名作。

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